コワーキングスペースでライブラリーを創って運営するまでをつづったストーリーシリーズ第3弾。
前回のお話では、Hub Kyoto Open Libraryの立ち上げで直面したトラブルと解決の経緯をお話ししました。今回のお話ではHub Kyoto Open Libraryが利用者に愛されるユニークなライブラリーにする試行錯誤の裏話をお話しします。
再び、立ちはだかる壁。そして現れる新たな協力者たち
1月初旬に入った頃かImpact Hub Kyoto内ではHub Kyoto Open Libraryの公開について、会員から進捗状況について尋ねられることがちらほらと有りました。
図書館として形が出来上がるうちに、本棚にどう本を並べればよいのか?という問題を議論することが増えていったのです。
単純に本のジャンルで分けると公共図書館と同じになるだろうというのが、私達の共通認識に成りつつありました。
しかし、バックグラウンドも立場も違う4人は興味も視点も違うため、あーだこーだとまとまる気配がありません。何度も棚を並び替え、本を入れ替えしていくうち、1月が終わり、2月に差し掛かりました。
そうして、切羽詰まった私は最初のコンセプトに忠実になることにしました。
そう、みんなで創る図書館として、さまざまなアイデアを集めて全部まとめてしまおうと決めたのです。
アイデアを集める
アイデアを会員から集めよう。そう決めた私は、ある会員の協力を得て図書館のプレオープンイベントを行うことにしました。
幸いHub Kyoto Open Libraryに興味がある会員やImpact Hub Kyotoと交流のある人が参加し、ワークショップでは盛んにアイデアが飛び交いました。
生まれたアイデアには「誰かに成りきって読みそうな本を並べてみた本棚」や「平積みの積読スタイルの本棚」などが有りました。
ワークショップで生まれたユニークなアイデア達を活用したいと考えた私達は思い思いのアイデアを本棚を使って実現する場所として本棚の一角を「Book Lab」と名付けました。
そうして、Hub Kyoto Open Libraryには会員やイベントに関連した本が集まる「HuBooks」、アイデアを形にして実験する「Book Lab」の2大看板で運営することに決めたのです。
本棚をみんなで創る、とは
Hub Kyoto Open Libraryでは本を2種類に分けることが決まりました。しかし、それだけでは利用者同士の交流を促進するにはまだ足りないと考えた私達は、さらなるきっかけとなる仕組みを盛り込むことに決めました。
みんなで創るコンセプトの図書館は、既に先行事例が存在していて、例えば礒井純充さんが立ち上げたコミュニティ図書館「まちライブラリー」があります。運営側だけでなく、利用者側からも本を持ち寄って、コミュニティスペースとしての図書館を発展させる試みとしてHub Kyoto Open Libraryの目ざす方向性と一致している点もあり、大いに参考にさせていただいた一方で、Impact Hub Kyotoがコワーキングスペースとして既に持っているコミュニティスペースとしての価値が活用できる方法に創り変える必要がありました。
その一つの試みが栞を通した交流です。
図書館を立ち上げる当初から利用者間の交流を促進するアイデアの一つとして、映画「耳をすませば」に登場するシーン「貸出カードのやり取り」がありました。
そのシーンとコミュニティ図書館で既に行われている試みを取り込んで発展させたものが、「Hub Kyoto Open BookMark」と名付けられた栞です。
この栞は本を借りる際にスタッフから手渡されます。栞には本の感想やメモ代わりとして気になるフレーズを書き留められます。書き込んだ栞を挟んだまま本を返却すれば、新たなフレーズを新たな利用者が書き込めます。それを繰り返すことで、栞を通した交流の連鎖が生まれると私たちは考えました。
こうして、12月に始まり2月までの3ヶ月間続いたHub Kyoto Open Libraryの立ち上げはさまざまなアイデアを取り入れた誰でもすぐに利用できる仕組みを創ることに成功し、無事オープンできました。
図書館とは人が集まってこその場所
当初、もっと早く出来上がると見込まれていたHub Kyoto Open Libraryは予定よりも長い期間を立ち上げに要しました。しかし、時間を変えた分だけ良い空間にできたと思っています。
みんなで創る図書館というコンセプトを掲げている以上、利用した人たちがHub Kyoto Open Libraryを好きになってくれるよう、スタッフ側はもっと改善を尽くしていきたいと考えています。
図書館という場所は、利用者が本が読めて借りることができる場所です。利用してくれる人がいて初めて図書館はその存在意義を認められることができます。
私達スタッフはHub Kyoto Open Libraryという空間を完成させましたが、それに甘んじることなく沢山の人が使ってくれるような魅力的なイベント、アイデアを生み出していきたいと考え、皆様に提供できたらと考えています。