Generation Impact Fellowshipの国内最終選考会でファイナリストに選ばれた株式会社ROOTSの中山慶さん。あらためてROOTSの取り組みや9月22日にオンラインで開催されるアジアでの最終選考会「Regional Demo Day」に向けた意気込みを伺いました。
あらためてGIFのNational Finalist選出、おめでとうございます! はじめてROOTSのことを知る方に向けて、ご活動の目的と内容を教えてください。
株式会社を設立したのは昨年3月ですが、7年前に自分自身が京北に移住してきたところから活動は始まりました。京都市から車で約1時間の距離にある中山間地域の京北には、美しい自然だけでなく、昔からの人々の暮らしの知恵や僕らがローカルウィズダムと呼んでいる、林業・農業に代々携わっている方々の豊かな里山のエコシステムがあります。同時に、この7年間で約900人もの人口が減少している過疎地域でもあり、急激に失われつつあるローカルウィズダム、自然災害や獣害の被害なども深刻なエリアでもあります。京都市内ではオーバーツーリズム問題がある中、「もうひとつの京都」として地域全体が一緒に豊かになっていくことを目指す”Community Tourism”を通して地域の魅力を発信しています。
活動の柱は主に3つで、①国内外の大学向けのスタディツアー(教育プログラム)、②Discover Another Kyotoという個人客向けのツアー、③サテライトフィールドと呼んでいる他地域への伴走型コンサルティングを展開しています。①では、去年より、例えば香港理工大学の学生たちが座学での学びに加え、フィールドに出て自然災害の被害を受けた木材を使ってツリーハウスを建てたり、デザインの切り口で持続的な地域経済の在り方・事業アイデアをプレゼンする国を越えた学び合いなどのプログラム、②では、単なる観光名所を巡るSite Seeingではなく、地域の生き方や自然・生命・人の暮らしに焦点を当てたLife Seekingのツアーを実施。③のコンサルティングは、分析してアドバイスすることではなく伴走するパートナーとして共に地域ツーリズムを共創していくことを大事にしていて、現場の中でROOTSが得てきたノウハウをもとに、里山における持続的な地域経済のモデル化を目指しています。コンテンツ開発、ブランディングなど日本国内にとどまらず、アジアの里山とも繋がって波及させていけると思っています。
伺っていると、中山さんご自身が移住者の立場であることが里山と世界をコネクトする上で鍵となっているように思うのですが、そのあたりの視点や気をつけていること等をもう少し教えていただけますか?
そうですね、私自身、移住前は東京で旅の雑誌の編集の仕事や、出版元の旅行会社のツアー同行で、秘境を含め世界80ヵ国を取材してきた経験があります。なので、異文化コミュニケーションをベースに都市やグローバルの視点をもっていること、頭・脳に偏重していた東京での生活と違い、身体の感覚、見える世界の解像度が上がった実感があるので、お客様が求めていることに気づけたり、地域と深い関係性を築いた上で外部との橋渡しをするようなコミュニケーションを心がけています。例えば、日頃から地域で月に1回住民の方に英語を教える「里山スクール」もやりながらコミュニティとともに育み、観光業に関わる人だけでなく、ROOTSのプログラムを入り口にして地域全体の総合産業を醸成していく思いをもって実践し続けています。
やってみないと分からないことも多く、大局観をもちながらもJAZZのジャムセッションのように、様々なプレーヤーと動きながら創発していくプロセスを大事にしています。、住むことで初めて築かれる人間関係があるので、いかに地域の中で継続的な交流を生んでいくか、深い関係性を育む丁寧なツーリズムを目指しています。その意味で、外部の方が事業計画や資本だけをもって地域に入るのは難しく、そのようなリソースをもつ企業さんと地域とを、中の視点と外の視点をもっている自分たちがコネクターとなって繋いでいく役割を果たしたいと考えています。
GIFに応募いただいた今年はROOTSや中山さんにとって、どのような意味やチャレンジがあり、GIFを通して達成したいことは何でしょうか?
もともとGIFには、アジア地域とのつながり、パートナーシップの可能性を広げたくて応募しましたが、コロナ禍による影響を大きく受けながら現場とつながったプログラムをどのようにオンライン化できるのか、リアルとの違いやマネタイズ含めたビジネスの形を僕らも模索しています。
ちょうどタイミングとしては、これまでの活動を踏まえてROOTSの軸や強みが見えてきて、発信していく時期に来たと考えていたので、さらにどのように事業を深めていくかGIFのメンターの方々にアドバイスを頂けるのはありがたいですね。そして、GIF自体もオンラインとなり、その運営そのものにヒントがあると考えています。オンラインだからこそできること、その可能性を誰もが考えて模索しているタイミングですよね。足枷もある分、お互いの繋がりが生きてくるのではないかと。
他方で、オンラインでは知識や情報は手軽に伝えられる反面、里山は実際に来てみないと分からない、直接体験することに意味がある五感の世界なので、オンラインとリアルとのハイブリット型を志向していくことがチャレンジです。コロナをきっかけに、社会全体が人間の本来の健やかな、本質的な価値を求める方向に向かっていると思うので、その方向性を取り入れながら模索していきたいと思っています。オンラインがもつ裾野の広さとリアルな場の深さをもって立体的に作っていければ、そのことも一つの他地域のモデルになり得るのと考えています。
もう一つのチャレンジは、企業にどのように関わってもらうか、という点です。実際に協賛としてROOTSのプログラムに何社か入っていただいているのですが、地域の課題に対して何かできないか切望されていて、それに対してROOTSが地域の資源や可能性とつなげること、大学や行政にも参画いただいているのでまさに産官学連携ですが、とくに産業の部分がどう入っていけるか深めていきたいと考えています。たとえば、新しい働き方として京北でワーケーションをする、リーダーシップ研修を京北でしていただくことや、また、土砂崩れなどの自然災害をシミュレーション分析するAIのような技術面でも協働の可能性があります。そのあたりは今後の伸びしろだと思っていて、GIFのメンターの方々やアジア各国の参加者とも意見交換しながらアイデアを広げていきたいです。
それでは最後に、アジアでの最終選考会Regional Demo Dayに向けた意気込みを一言、お願いします!
GIFのひとつの側面は、アジア太平洋地域9都市の参加者とともにプレゼンテーションし、そこでの優勝者には協賛のBank of Americaから資金とインキュベーション支援の機会が与えられること。そして、それ以上に、SDGsの課題をテーマにした共通の問題意識と志がある仲間との出会いの場と捉えています。ですので、お互い学び合いアイデアを磨き合っていくこと、ともに成長してそれぞれの事業が各地域で展開していくことが楽しみです。もしROOTSともパートナーシップを組める協働可能性も生まれたら、さらに嬉しいですね。そのような思いをもって日本代表として頑張りたいと思います。
中山慶さんが最終ピッチを行う「Generation Impact Fellowship」アジア最終選考会の概要・ライブ中継(会場:Impact Hub Kyoto)については、こちらをご覧ください。