『聞きたい!この人のお話』 Vol.6 ~ 江口紀文さん
30 6月 2018 - impact hub kyoto

アパレルを中心に、様々なプロジェクトに参画されている江口さん。この度、その一つのブランド『tadas』がオープンしました!
そのtadasについての話を聞きながら、マルチタスキングに対する考え方やお仕事に対する情熱、そして普段大切にされている想いを伺いました。

この度は『tadas』オープンおめでとうございます!このブランドに関わった経緯を教えてください。

全ての始まりは、実はImpact Hub Kyotoからなんです。

私は元々3つの組織に携わっていました。私が代表を務めてアパレル小売のコンサルティングを行う『null』、ヒューマンフォーラム、SPINNSです。それに加え、アパレル会社へ通販コンサルも行なっています。

https://www.nullkyoto.net/ 「null」

http://www.humanforum.co.jp/ 「ヒューマンフォーラム」

https://tadas.theshop.jp/ 「tadas」

http://www.spinns.com/ 「SPINNS」

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一番注力している「null」関連の案件でいろいろ声をかけてもらっているのが現状ですが、その中で昨年Impact Hub KyotoでのIoTサロンに参加した際にお会いした堀江さんと仲良くなりました。そのご友人が立ち上げを予定しているプロジェクトの話を聞き、一度会ってみようと思ったことがきっかけです。立ち上げの場所が私の出身地である富山県であることも何かの縁を感じました。そうして現tadas代表、株式会社オズリンクスの原井さんと会うことになりました。

原井さんの印象は、とても熱意のある方だということです。「地域の人を雇って使われなくなった着物を扱う事業」というコンセプトは決まっており、私のこれまでの経験を元にそれを形にしていくことが私に求められていることでした。現地も視察して本格的に参画したのが今年1月初旬ですね。

基本的には原井さんからのアイデアや要望を利益や数量など数字、仕組みで詳細を詰める、という細かい部分で仕事を進めるという具合でした。

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アパレル業界に携わるきっかけは何ですか?

古着がすごく好きだったんです。古着が好きで会社に入ったんですが、特にアパレル業界はトレンドを見極めながらその波を掴む必要があります。生き残るためにいつも必死に考えることを繰り返すうちに、いつしか数字を見るようになりました。数字を見るようになると仕組みを考えるようになるんです。元々プログラマーもやっていて、しっかりした仕組みがないと淘汰されていく会社を何社もみてきたという経験もあり、そういう面も含めて、「好きなこと」と「仕組み」の両方を見る経験できたのがよかったかなと今では思っています。

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仕事をする上で大切にしている考え方は何ですか?

『長く付き合いたい』これに尽きますね。
これはヒューマンフォーラムで学んだ教えでもありますが、長く付き合うためには、周りの仲間がちゃんと幸せか、お客さんと取引先がちゃんと幸せか、家族がちゃんと幸せか、をきちんと見ることが大事です。そしてあとは「未来があるか」ということ。時間軸で見て10年後・20年後もちゃんと幸せかどうか、社会性があるかという点は常に考えますね。
今回の「tadas」の件にしても、例えばコスト面を考慮して中国で製造してすごい利益を出したとしても、やはりそこに未来は感じませんが、地元地域にきちんとお金が落ちて経済が回るという部分に未来を感じました。原井さんが元々ある価値をクローズアップしたいというパワーをすごく持っていて、そこに共感しました。「tadas」の想いとして八尾の町全体を活性化したいということで、例えば縫い子さんの技術を最大限活用しています。昔は裁縫ができない人は嫁ぐ際に裁縫教室に行ったという文化がありましたが今はなくなってしまいました。ただ裁縫教室の先生をやっていた人の腕は感服するものがあります。本当に上手なんですよ!すごい技術はあるのに手を余らせている状況だったのですが、これはいいなと直感しました。

現実的な部分も含めて永続的にやっていけるのかということは常に念頭に置いて、いつもかなり自問自答します。

生まれ育った地元に戻ることに関してはいかがでしたか?

地元愛はやっぱりありますし、自分が長男というのもありいつか帰らなきゃと、そしていつか地元で仕事したいなと思ってはいました。特に新しいことをリリースする仕事で地元に貢献できるのは嬉しいですしとても喜ばれます。
自分のルーツもやはり富山や北陸にあると思っています。日本海側って雲がすごく厚くて、普段は昼間も電気をつけていたイメージがあるくらい暗いんですよ。さらに周りには山があり海がありまるで閉じ込められている感じがするんですよね。僕は音楽が好きで特にUKロックが好きなんですが、考えて見るとイギリスの気候は北陸とよく似ているのがそう思わせたのかなと思うんです。そういうことを鑑みると僕のルーツはやはりそこにあると思っています。

今の社会に対して思うところや情熱を持っていることはありますか?

”楽しいこと”ってそれぞれいろいろな形があると思っていますが、いろいろなものを組み合わせていろいろな楽しい形を作っていきたいですね。世の中にクローズアップされている、例えばフェスなどはそれ自体は素晴らしいことですが、それを楽しめない人もいると思っています。北陸は内向的というかバーっといくタイプではないんですが、逆に北陸の人、そういう気質の人から逆に発信するというのはそう意味では面白いかもしれない。そういう内向的な人とか僕みたいな人がちゃんと仕事してるっていうのを前面にみせていくのも例えば面白いのかなと思っています。

”もっとシンプルに、本質を見直すこと”も今の時代において大事なのかなとも思います。僕の会社名の「null」は本来ゼロという意味ですが、あれはゼロじゃないんですよ。ゼロというのはゼロという情報があるので、「null」自体は何もない”無”を表しています。世の中にはアイデアを形にできる人もいるし、アイデアだけの人もいます。特にアイデアはあって形が作れない人に関していうと、もっと昔は単純だったなとつくづく思うんです。モノが作りたいとなったらパッと作れて、そのモノが売れたんです。それに比べて今はモノを売る際にマーケティングもしないといけないなど、形にする前に情熱が失われる機会がたくさんあると思うんです。すごい料理が上手だからふるまって稼ごうというような単純だったものが、みんなやってるからカッコいいホームページを作って、キレイな写真の撮り方を考えて、結局本質の「おいしい料理を届けること」ができなくなっている世の中に、何も考えずにそのまま表現できるようなお手伝いがしたいと思っています。

実は私はDJもやっています。DJはロックだけとかヒップホップだけなど、大抵好きなジャンルがあってそれぞれプレイするスタイルが違うんですよ。でも私はどんな曲でもかけられるんですよね。というよりも、特にこだわりがなくて、いつもお客さんを見ながらやっています。実はそれがコンプレックスだった時があって、「自分がないんじゃないか」と考えた時期もありました。ミーティングでも人の意見によって自分の意見が変わることも多々ありましたしね。でも今はやっと「それも個性じゃん、それも悪くないな」と思えるようになりました。そういう意味でも、自分の個性は様々なルーツで作られているんだから、いろんな意味合いがあっていいんじゃないかと思うようになりましたね。

今は何もかもが複雑になり過ぎているように思います。例えば服屋さんに関して言えば、本当は可愛いものやときめくものを仕入れて、「可愛いでしょ」っていうだけでいいんじゃないかなって。売り方を考え出すと夢がないなと思ってしまいます。僕は「愛」と「未来」をキーワードに、10年・20年先を見据えてシンプルにいいものを手伝ういうスタイルでこれからもやっていきたいですね。

最後に

家族には本当に感謝しています。「本当にありがとう」と感謝を示すことが難しかった時期もありましたが、そうなると心の安定がないので仕事もうまく回らなくなっていったんですよね。でも昨年は独立するかしないで悩んだ年で、やはり家族とも向き合って自分が思っている胸の内を包み隠さず伝えました。家族がそれを応援してくれたことは私のパワーにつながりましたね。この歳になって家庭はやっぱり大事だなって再認識した瞬間でした。それはもちろん親に対してもそうです。家族は私にとって頑張れる原動力です。

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取材/記事:久保田啓介

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