牛肉も、豚肉も、鶏肉も、そして昆虫肉も。

これが『BugMo』の由来です。「昆虫肉を普段の食の選択肢に入れてもらい、これから先100年続く豊かな食文化を残したい」との想いを胸に今尚突き進むImpact Hub Kyotoメンバー会員の松居佑典さんに、BugMo創業に至るまでのお話を伺いました。

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『BugMo』を一文で表すと何ですか?

昆虫由来のタンパク質の養殖システム開発および生産です。

 

主な商品は何ですか?

コオロギの肉を使ったプロテインバーがメイン商品です。

昆虫を食べることには皆さんはなかなか慣れていないので、よりクリアな需要にマッチングさせる必要があると感じました。コオロギなどの昆虫における栄養素的な機能といえば、「低脂質・高タンパク」という点なんですよね。そこで低脂質で高タンパク、つまり良質なタンパク質の需要がある市場を考えた時に、アスリートや体を鍛えている方などボディーメイキングをする方々だと思い至りました。

 

アスリートはトップターゲットなのでしょうか?

そうですね。ただし、アスリートに限っているわけではありません。私たちが対象としているのは、ワークアウトによる筋肥大のためのプロテイン摂取を目的とする方々ではなく、日々のフィットネスやワークアウトを通して日々をより充実させたい方々なんです。

 

昆虫食に目を向けられた動機はどのようなものだったのでしょうか?

「開眼期」

これは私にとって出発点なのですが、私が大学4回生の春に体調を崩して大学を1年休学しています。それまでは法学部に所属していてフットサルサークルのキャプテンもしていました。法学部なので当時は「普通に弁護士になってそのために働きたい」というふわふわした人生を送っていましたが、体を壊したことをきっかけにその後1年間引きこもってしまいました。それまでは法律を学び権利で人や人権を守ることを考えていましたが、自分の体を壊し学校に通えなくなったことで初めて自分の健康の大切さに気付き、人は体が元気でなければ人のために何もできない、そもそも人は健康じゃないと何もできない、自分の夢さえも叶えられないことに気付かされました。そして至った結論が、4回生まで通った大学の中退でした。当時はほぼ単位を取り終えており残すところは卒業のみだったのですが、それでもこれ以上法学部で学ぶ意義がわからなくなってしまったんです。

 

体を壊した原因は食生活にありました。その後1年間をかけて本気で食生活を叩き直したおかげで、今ではコンビニのご飯が食べられなくなりましたね。その経験を通して良いものと悪いものを体が判断できるようになったことはよかったですが、当時は周りのみんなが一流企業に就職していく中で自分が人生の最後尾に置いていかれたような気になり、精神的にもきつかったことを覚えています。ただそうやってもがいた1年間で自分の体や食生活を見つめ直す中で農業や食、環境にすごく関心が出てきました。それなら海外の大学で一回環境学の視点で学んでみようと思い立ち、ニュージーランド・オークランドの大学に行きました。そこで学んだことはとても多かったですね。

 

「放浪期」

ニュージーランドから日本へ帰国して就職活動する前にタイやカンボジアへ立ち寄り数ヶ月間放浪の旅をしました。東南アジアではカシューナッツ栽培が盛んですが、工場という加工工程を持たないために漆科であるカシューナッツの採取に手がかぶれてしまう現地の方の姿、それに対してサポートを一切しない国、またバイヤーに買い叩かれている現状に対し強い憤りを感じた旅となりましたね。

帰国してからはしばらく日本の電機メーカーで働いていましたが、食や農業に携わりたいという想いは日に日に強くなっていたところで、当時の放浪中にみた光景を思い出しました。それに加えて男社会である電機メーカーでの従業員の食生活の悪さも目の当たりにし、そのような社会人に対してもっとヘルシーな食事があってもいいなという思いも加わり、東南アジアの現地の人に加工工程を与えることができ且つ私たち側からは高品質でヘルシーなスナックとしてカシューナッツを日本人に享受できるとの考えに至りました。思い立てばすぐ行動、ということですぐさまリサーチのためにカンボジアにリサーチに行きました。初めは昆虫を養殖魚の餌にするか人間に提供するかを迷っていました。カンボジアでは魚の養殖が盛んになってきてはいましたが、天然の方が良く養殖の魚は体に良くないという思想は根強く残っていたため、昆虫肉からなる高品質なタンパク質を養殖魚に摂取させることをまずは念頭に置いてリサーチを始めました。

 

「追い剥ぎ、のち人の優しさ」

実は私、カンボジアで強盗に襲われて身ぐるみ剥がされるという経験をしているんです。リサーチ中に不用意に色々な人に声をかけてしまったことから、良からぬ人に閉じ込められて物を差し出すよう迫られました。カードもお金も全て盗られてしまい一銭もなくなったのですが、それでも現地には助けてくれる人がいたんですよね。彼らは僕を家に泊めてくれてご飯まで食べさせてくれたんです。それどころか甕の中に残してあったごちそうの天然魚を私に食べさせてくれるんですよ。さらには「ゆうすけ、今日は高級なアリが取れたぞ!」と言ってご飯にもかけてくれるんですよ!これまでもちろんアジア諸国で昆虫を食べる文化は知っていましたがこれまで食べたことがなかったにも関わらず、そこではそのアリを食べたんですよね。彼らが私のことを本当に思ってくれて、貴重な天然魚と高級なアリを出してくれる。その優しさに心から感謝と感動を感じるとともに、その昆虫食のある文化がいいなとそのとき素直に思いました。

そしてそこから、人に向けた昆虫肉の提供に進むことになるわけです。

 

松居さんが事業を通して大事にしている想いは何ですか?

体を壊した経験があるからこそ、自分のテーマとして「自分の体も未来も自分でデザインできる」ことに対してものすごく欲望があると思うんですよ。それがまさに今の事業の原点ですね。

 

現在、日本では牛や豚など牧畜の餌の80%を輸入に依存しています。そしてその餌を世界中が取り合っているのが現状です。要するに、明日私たちの食卓に同じ肉が同じ値段で上がる保証はどこにもないということが言えます。それにも関わらず自分の健康さえ他の要因に影響を及ぼされていることに私はすごく憤りを感じています。また一方で発展途上国の方々も先進国の畜産の飼料を作るために土地を買い抑えられており、先進国のために大豆やコーンなどを作らされている、そしてその横では食糧不足や水不足に苦しんでいる人たちがいる。これでは彼らが彼らのニーズを自分でコントロールできていない、そして彼らから輸入している私たちも食の安全性などを自分たちでコントロールすることができていない。この現状を世界中の人たちがみんなでコントロールすることができたら、私はそれが最高だと思っています。

 

個人的にはいずれ貿易は無くなると思っています。自分たちの地域で作れたらより安くより安全なものが作れる、だから例えばアフリカで昆虫を育てて日本に輸入すればいいのではとよく言われますが、私にとってはそれは違うんですよ。今のビジネスでは安く作って高く売るっていうのは当たり前で基本だと思いますが、やはり世界でそれぞれに自立するものを作りたいわけで、トレーディングはしたくないですね。お肉に関しても例えば京都の人が食べる肉は京都で作ったらいいと思っています。ただし現状では飼料の調達など克服すべき難題があるため、昆虫肉でならその世界の実現が可能なのではないかと考えています。現在は昆虫肉の値段が高いのですが、今後『地産地消』『自産自消』が進めば、当たり前のタンパク質として昆虫肉を世界中の人たちと享受できると思っています。

 

「世界中ひとりひとりの人が自分の体も未来も自分がデザインして歩めるような世の中にすること」。私が今の事業でやりたいことは決して昆虫肉が作ることでも途上国の人が抱える食料問題を解決することでもありません。日本もアフリカもアジアも全員が自分で自分の地域で食料を作れるようになる、自分の体を誰にも脅かされない世の中を作る、そしてその中で意義のある人生を送れるような社会を作ることが私の本当の目標です。

 

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今日に至るまでに波乱万丈な道のりを歩んでこられた松居さん。そんな彼だからこそ見えるものがあり、また私たちもその想いに魅せられてしまうのでしょう。

そんな『BugMo』がこの度、事業本格スタートのためにクラウドファンディングに挑戦中です!これから世界の食生活を大きく変える可能性を秘めたBugMoを、それぞれがそれぞれにできることでぜひ私たちで応援しましょう!

『BugMo』クラウドファンディングの詳細はこちら

asada

asada

Impact Hub Kyoto の企画づくりと触媒となるコーディネーター。
アニミズムの研究をはじめ、人類の進化や普遍的なもの、社会を良くするためのエコシステムの構築と探究がテーマ。