『聞きたい!この人のお話』 Vol.4 ~ 小田まゆみさん
「子どもたちが自由に生きられる存続的な世の中を作っていきたい。」
May.12.2017
第四回目に登場するのは、Impact Hub Kyoto(以下、Hub) のアドバイザー的存在であり、世界的に活躍されているアーティストである小田まゆみさん(以下、まゆみさん)です。まゆみさんは、現在はハワイ島の『ジンジャーヒルファーム』で瞑想やワークショップを通していのちを大切にした生き方を若い人たちに教えておられます。
「かつての日本の精神を取り戻す」
いま、かつて日本人が大切にしてきた書道や茶道といった「道」、それだけでなく、農業に見られるような「真面目に一生懸命に精進する日本人の精神」が外国に暮らす人々の関心を集めているそうです。そして、かつての日本のよさは現代も全てなくなってはおらず、まゆみさんはそれを取り戻していくことを目指されています。
まゆみさんはどのようにかつての日本のよさを発見し、このような取り組みを目指されるようになったのか、その理由をお伺いしました。
「外に出て、日本の精神性に興味を持つようになった。」
結婚を機にニューヨークへ渡られたまゆみさん。結婚生活で感じたことや変化の最先端を行くアメリカの人々との出会いが、日本という国のよさを再発見するきっかけとなったそうです。
結婚生活の中で、西洋と東洋では相容れないと思うことがありました。そんなときに禅を見つけて、アメリカの農場で畑を耕したり瞑想をしたりと、禅の修行を受けました。禅を通して日本の精神性に興味を持つようになったんです。
不思議なことに、アメリカ文化の中で疎外感を感じる人たちが、新しいものとして禅の勉強を始めていました。物資文明の文化ではなく精神性を求める人たちが禅を始めるという動きが、60年代から70年代の終わりにかけてものすごくありました。ビートルズやボブ・ディランが歌を歌ったりしていて。
▲まゆみさんの作品(ホームページよりhttp://odamayumi.com/)
「私にしてみたら、美術や芸術、音楽が世の中を変える要因は強いです。」
だから、色んな仕事をしてきましたが、もう一度美術に戻り、美術を通して仏教の慈悲や道教の中の自然に対する畏敬の念を伝えられたらと思っています。
それに加えて、『とようけのもり』という農場を奈良で始めて二周年になりました。
▲二周年を迎えた『とようけのもり』
農業と禅や音楽、芸術には通じるところがあるんです。これはやってみないと分からないから、ぜひぜひやってみてほしいですね。
農業をやると賢くなっていくんです。例えば野菜を育ててみると、スーパーに行って買うだけだと分からないですけど、たくさん勉強しないといけなくなって、ありがたみが分かるようになります。
かつて日本で農業を営んでいた人たちって、畑で一日中働いていたわけじゃないんです。お昼を畑で食べて、お茶を飲んで、ゆっくりした流れの中で四季と一つになって人間が過ごしていました。
日本にかつてあったそうした文化が、高度経済成長の中で失われていった。今の日本人の方がよっぽど働いています。でも、文化ってそんなに発展しなくていいんですよ。
農業も機械化によって変わっていきました。みんなが借金を作って脱穀機を持たなくてもいいはずなんです。一つ脱穀機があったらみんなで使えるわけで。すべて消費社会になっていってます。そのために出るゴミってすごいじゃないですか。
今は里に帰る若い人たちが増えているし、彼らを助け支えていきたい。日本の地域性を豊かにしていた文化に戻れるかは、若い人たちの創造性が重要になってきます。それを支えていきたいですね。
▲ハワイ島の『ジンジャーヒルファーム』で自然農法に取り組む
「若い人たちが創っていく世界のために、残していく使命感がある。」
若い世代にちゃんとした情報を残したいし、大変な文化を作ってつけを残してしまった私たちには、若い人たちにその時代を生き延びる術を伝えていく責任があると思っています。
インタビューの間、穏やかでありながら力強く語りかけられるまゆみさんの言葉から、いまの社会を見る新たな視点を頂きました。
そこにはこれまで様々な実践をされてきたからこその言葉の重みがあり、目の前の若者に対して真剣に向き合ってくださるからこそ心に響いてくるものがありました。「子どもたちのために」「若者たちのために」と言葉を紡がれる姿から、お話を伺った身としてそのバトンをしっかりと受け継いでいかなければと、背中を押してもらえた気がします。
そんなまゆみさんからImpact Hub Kyotoの可能性について、最後にお伺いしました。
子どもを連れてこられる、子どもを見ながら何かできるというのが京都のHubのいいところですよね。家族連れで何かできるのは昔の村みたいですし、こういうHubの在り方は外国にも示せるところがあると思います。色々な人がそれぞれの形で参画できると素晴らしいと思います。昔の村のように、収穫祭やお花見など季節的なイベントを取り込んだり、鴨川の掃除をやったり。
あの場所のイメージはすごくいいものだと思いますよ。いい人たちが集まっています。
これからのみなさんに期待していますよ。
▲これからの社会について静かに、そして力強く語りかけてくださいました。
小田 まゆみ (おだ まゆみ)
アーティスト、カリフォルニア統合学大学院名誉博士。
東京芸術大学卒業後ニューヨークのプラット版画工房で学び、数多くの国際ビエンナーレに出品。女神をモチーフに女性と自然とのつながりをテーマにした作品を世に出し「日本のマチス」として知られる。 作品は、ニューヨーク近代美術館、ボストン美術館、栃木県立美術館、東京芸術大学など、多くの美術館でコレクショ ンされている。
1992年 日本政府のプルトニウム輸送に反対し、団体「プルトニウムのない未来Plutonium Free Future」をカリフォルニアと東京に設立。新エネルギー推進運動を世界に訴え、核兵器を非合法化する運動の国際法廷(在ハーグ)の運営委員を務める。
アーティストとしての活動だけではなく、平和環境運動やアメリカ政府が企業に依頼した女性のリーダーを育成する、 リーダーシップトレーニングのスピリチュアルトレナーとしても活躍している。 現在は、ハワイ島の広大なオーガニックファーム『ジンジャーヒルファーム』で、アーティストとしての活動に加えて、多くの人たちとオーガニックファーミングへの愛情を分かち合いながら、瞑想やワークショップを通していのちを大切にした生き方を若い人たちに教え、創造的な生活を送っている。
東北関東大震災後、若い人々の里帰りを助ける「女神の郷」のプロジェクトを設立。著書『ガイアの園』、『女神たち』(現代思潮新社)他。
小田まゆみ書籍:http://mayumiodajp.shop-pro.jp/
ジンジャーヒルファーム:http://www.gingerhillfarm.com/jp/
女神の郷:http://www.megaminosato.com/
まゆみさんが参加されるイベントのご案内
ティクナットハンに師事しマインドフルネスのトレーニングをうけたハワイ島在住の小田まゆみさんから豊かな未来を創造するこれからの生き方を学びます。
日常のくらしの中で、瞑想、農業体験、食事つくりを通して、体と心のトレーニングをしながら氣を入れてくらす生き方を学びます。たべるものは山で取れる薬草を収穫し、薬膳料理を自分たちでつくり、神道や仏教、タオから日本の精神性を学び実践をしながら、マインドフルな1日を送ります。
日時:5/20(土)12:30集合/21(日)9:30時集合
費用 20日から1泊2日:25,000円/21日(日)日帰り:13,000円(10時スタートWS②からの参加になります)
場所 奈良市山町1327 とようけのもり tel:0742-62-3518
イベントの詳細はこちら
60歳の時からの15年間作り続けているハワイ島のオーガニックファーム・ジンジャーヒルファームでのノウハウを日本で体験できます。環境活動のこと、禅センターのお話など、わたしたちのこれからの暮らしを実践されているまゆみさんに学びましょう。
日時:6/2(金)~6(火)
費用:2泊3日:26,000円~5泊6日:60,000円
同時に小田まゆみさんの個展もあります。げんきなやさいと女神たちシリーズの展示をします。
オープニングには75歳のお誕生日をみんなでお祝いしましょう!
小田まゆみさんの来日に合わせて、2015年からくらしの実践農場とし てはじめたとようけのもりがある奈良で個展を開催します。
6.2(fri) 18:00~ レセプションパーティ@DWS 猿沢池
(当日は小田まゆみさん75回目のバースデーのお祝いを兼ねています。 )
場所:DWS [Design Work Studio] 奈良市今御門町22 TEL:0742-22-1666
イベントの詳細はこちら
記事:鴻野 祐(こうの ゆう)
京都市伏見区出身
静岡県立大学 国際関係学部国際関係学科 三年(休学中)
現在、大学を一年間休学し、Hubの会員団体でもある
NPO法人場とつながりラボhome’s viでインターンとして関わる。