『聞きたい!この人のお話』 Vol.2 ~ 宇都宮昌美さん
多種多様な活動に取り組むメンバーのサポートや、コミュニティ全体の運営に携わるImpact Hub Kyotoのチームメンバー兼事務局スタッフの役割

Nov.12.2015

第二回目に登場するのは、Impact Hub Kyoto (以下、HUBと表現することがあります)というコミュニティに“欠かせない役割”を担うこの方。多種多様な活動に取り組むメンバーのサポートや、コミュニティ全体の運営に携わるImpact Hub Kyotoのチームメンバー兼事務局スタッフ、宇都宮昌美さんです。

“個人”と“社会”、そして“自然”との、豊かで持続可能な関係性をいかに築いていくことができるかという探求は、私の生活そのものでした

大学では教育学を専攻、タンザニアでの国際協力や屋久島での学習塾経営を経て、Impact Hub Kyotoにたどり着いた宇都宮さんにお話を伺いました。

宇都宮:『実は私、京都に引っ越して来てImpact Hub Kyotoというコミュニティに出会うまで、“ソーシャルイノベーション”とか“社会起業”という言葉さえ聞いた事がなかったんです・・・

京都に来るまでは、大学卒業後タンザニア、マーシャル諸島、アメリカ、屋久島とあちこちで暮らし、国際協力・教育の分野で仕事をしていました。それぞれの地域社会や自然環境で、1人でゼロから暮らしを築いていく中で、“個人”と“社会”、そして“自然”との、豊かで持続可能な関係性をいかに築いていくことができるかという探求は、私の生活そのものでした。

2014年の夏に京都への引っ越しを思い立ち、何をしようか探索している時にImpact Hub Kyotoに出会ったのは本当に偶然でした。“個人—社会—自然の関係性をより良く変革していく”という活動理念に、『こ、これだ!』というかなりの衝撃と興奮があったのを覚えています。』

そう明るく話す姿は、まさに“人々を惹きつけるHUB”といった印象の宇都宮さん。日本とアフリカという文化も生態系もまるで異なる地域で過ごした旅路の中で、宇都宮さんをその探究心に導いたのはどんなことだったのでしょうか?

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宇都宮 昌美 (うつのみや まさみ)
一般社団法人 Impact Hub Kyoto チームメンバー兼事務局スタッフ

愛媛の小さな漁村で生まれ育つ。広島大学教育学部卒業後、青年海外協力隊としてアフリカのタンザニアに派遣され、約3年間現地の中学校で理数科教師を務める。その後、習得したスワヒリ語を生かし、在タンザニア日本国大使館で草の根無償資金の調査・運営外部委嘱員として1年間勤務。
再度短期ボランティア隊員としてマーシャル諸島に派遣されたり、環境教育に興味と必要性を感じ、オーストラリアの大学院入学を目指しながらアメリカと日本を行ったり来て働く20代後半を送る。娘の将来を心配する両親に30までには落ち着きますと宣言し、ちょうど三十路で屋久島にて学習塾「はな丸塾」を開業。5年後、親の病気をきっかけに愛媛に帰り、愛媛の小学校の特別支援学級担任を務めながら実家で暮らすが親の復帰と任期終了を機に、アラスカへ旅立つ。旅の途中「そうだ、京都にいこう」と思い立ち、京都にくる。

宇都宮:『私の故郷は、愛媛の信号もない町の小さな漁村なんです。地域中の、人はもちろんペットの犬の名前まで全部把握しているような環境の中で育ちました。

高校で少し大きな街での下宿生活が始まった時、親元を離れ、全く新しい社会環境の中で生活を営み、世界を広げている感覚がとっても新鮮でワクワクしました。自立して生きる力を磨いている感覚です。それが、生きる力というものを意識し始めたきっかけだったと思います。

タンザニアでは、人の力がはるか及ばない自然本来の姿を目の当たりにしました。もともとそこにある固有の自然に現地の人々が畏敬の念を持ち、時にはあきらめるという事をしながら共存するあり方に感銘をうけました。4年間住んでみて、人間社会と自然との関わり方や折り合いの付け方、共存方法を深く考えるようになりました。

と同時に、自然という大きな存在を感じる環境で暮らす中で、“人が本来持つ生命力”というものにも惹かれていきました。そして、そうした“生きる力”や“エネルギー”が集まり、生みだされる人々の生活や文化への関心が強くなっていったんです。』

個々の活動のコアとなっている考えや想いをしっかりと理解し、共有することがとても大切

“ダダ(スワヒリ語で「お姉ちゃん」)”という愛称で親しまれ、まさにImpact Hub Kyoto の生命力といわんばかりにコミュニティを盛り上げる宇都宮さん。“生命力”という点では、バイタリティ溢れる人々が集まるHUBコミュニティの中で、スタッフとしてどんなことを考えて働いているのでしょうか?

宇都宮:『チームメンバー兼事務局スタッフとして働いているので、場所の管理から始まり、そこで行われるプログラムの運営、またメンバーとの連絡や調整など様々な役割を担っています。

Impact Hub Kyotoの特徴はやはり、ここに集まる人の多様さ。アートやビジネス、ITや教育、本当に様々な関心軸の人たちがいて、多様な視点や価値観を持っています。だからこそ、そうした人たちと向き合うときには、固定概念や『◯◯は〜こうあるべき』といったバイアスを外して、目の前にいる人と接することを大切にしています。

そしてHUBには ”ホスト” という役割も存在します。それはコミュニティにいる人同士や、新しくきた人とコミュニティのメンバーを引き合わせる役割なんですが、ただ名前と肩書きの紹介屋ではなく、個々の活動のコアとなっている考えや想いをしっかりと理解し、共有することがとても大切だと思っています。重要性とやりがいを感じながら、人と人とがつながる効果的な仕掛けづくりを模索する日々です。』

まさに多様な人・もの・ことが集まる「HUB」というコミュニティ。メンバーの特徴や活動に寄り添いながら、HUBとしてコミュニティ全体のビジョンをどう実現していくのかという議論は世界各地のHUBでも絶えることがないトピックの1つ。“内側”にいるからこそ見えてくるソーシャルイノベーションへの考察について伺うと、

宇都宮:『そうですね。私の場合は、“人の生きる力”に強く惹かれるんです。この分野で活動する人々は、ある種そうしたエネルギーや情熱の塊だと思っています。だから人々を魅了したり、ときに社会の仕組みをも動かしたりしますね。私は、そうした“たくましさ”がある人は、是非そのまま突き抜けてもらいたいと思っていますし、そのサポートができればとても嬉しい限りです。

ただ、そう思うからこそ感じることがあって。この分野だと、“社会のために、人のために行動しよう”というインセンティブから動きだす人が少なくないと思うんです。

とても素敵なことだと思うからこそ、是非、時々ふと立ち止まって、“自分自身の充足はできているだろうか?”と問いかけてみてほしいんです。

というのも、“ソーシャル(社会への関心)”が知らない間に先行し過ぎて、“セルフ(自分)”が逆に消耗し過ぎてしまっている人も少なくないのではないかと感じるからです。そのバランスの取り方が難しいというのはわかりながらも、是非そのバランスを両立してくれる人が増えてくれたらと思います。』

社会問題や環境問題に向き合う人たちの“バーンアウト(燃え尽き)”という研究があるほど、SelfとSocial のバランスの取り方は大きなテーマの1つかもしれません。まさに、社会起業家のような人たちを間近で見ている宇都宮さんらしい視点です。

宇都宮:『社会問題やソーシャルイノベーションってあまりに複雑過ぎて、一人だけではどうにもできないことも多いので、そうしたことに向き合う仲間が、一人で孤立したり、行き詰まったりしないような役割としても、HUBのように、多様な視点・活動に取り組む人々との交流や、そうした機会を通じた視点や思考のリフレーミングができる場は大切だとこの仕事をしていて改めて思いました。』

世界中あちこちで暮らし世界を広げた末、未来の希望の地として選んだのがど田舎の故郷だった

教育や国際協力を経て辿り着いた京都、そしてHUBというコミュニティ。最後に、現在の活動の先に描く自らの未来について伺いました。

宇都宮:『私は、これからの社会は自然環境・資源を含めた、より大きな視点で生活や物づくりを考えていくことが大切だと思っています。Human centered design があるとすれば、Human inclusive design のような。

そのイメージに達した時、頭に浮かんだ土地は愛媛の地元なんです。世界中あちこちで暮らし世界を広げた末、未来の希望の地として選んだのがど田舎の故郷だったというのは、自分でも驚きましたし、面白かったです。でも納得。土地ごとに存在する、固有の自然資源と共存し合える暮らしのカタチは、まさにそこにあったんです。

それで、今後どういうことがしたいかというと、地元の活性化に加えて、そこの暮らしをもっと外に発信したいという想いがあります。今やっているHUBでの経験も生かしたいです。その仲間も募集しているので、関心が重なる方は是非HUBでお茶でもしながらお話しましょう!笑』

と“ダダ”らしい笑顔と締め方で話を終えてくれました。
HUBというコミュニティには世界70都市その数の分だけ、個性溢れるチームメンバーやスタッフがいるのも魅力の1つ。HUBの運営に関わりながら、自身の活動を展開していく人々だからこそ、場が盛り上がります。

社会起業家やソーシャルイノベーションという言葉を聞くと、第一線でスポットが当たるプレーヤーにばかり注目が集まりがちですが、活躍の陰にそれを支えてくれる “伴走者”や“応援者”がいてくれるからこそ、駆けまわる人たちが走り続けられるのではないでしょうか。

多種多様な人そして活動が集まるこの場の中で、これから“ダダ・スマイル”のまわりにはどのような未来が描かれていくのでしょうか。

Fin

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