『聞きたい!この人のお話』 Vol.3 〜 宮迫憲彦さん
10 4月 2017 - impact hub kyoto

『聞きたい!この人のお話』 Vol.3 ~ 宮迫憲彦さん
「本からアクションが生まれていく。そんな新しい本屋さんを京都で創っていきたい。」

Apr.5.2017

 

第三回目に登場するのは、Impact Hub Kyoto (以下、HUB)の一角でこだわりのあるセレクト本屋さん「Montag Booksellers」を営む宮迫憲彦さんです。

 

「これからの出版は京都が中心になる」

 

岡山県倉敷市で生まれ育ち、大学から東京に出て、大手書店チェーンに就職した宮迫さん。いつどこに転勤するのかわからない生活のなか、子どもが生まれたことが転機になったそうです。そして、宮迫さんが選んだ場所は、東京ではなく京都でした。

 

 

「どこで子どもを育てていくのか?」

 

子どもが生まれたことで、仕事よりも「生活」や「暮らし」の優先度が一気に高くなりました。今のような転勤続きの生活は難しいと思い、転職しようと決めました。それでも本に関わる仕事がしたくて、次は出版社に行きたかったんです。いくつか出版社からお声がけいただいたこともあったのですが、もちろん勤務地は東京でした。「出版社で働くこと」と「東京で暮らすこと」が、ほとんどイコールである、というのがこの業界の特殊性だと思います。

 

でも、私は田舎で暮らしながら、出版の仕事がしたかったんです。

もう少し暮らしやすい場所で出版の仕事ができたらいいのになとか、東京以外の場所で出版文化が活発になるといいのにな、と思っていました。そうしたら、今の会社(フィルムアート社)で京都に常駐する人を1人募集していたんですね。

 

インディペンデントの本屋さんが多いというのも京都の特徴です。これからの出版活動の場所としてはすごく魅力的に思えました。それで、京都で働くことに決めました。このようなリモートでの働き方を許容してくれているフィルムアート社は、本当にいい会社だと思っています。効率を考えると当然東京にいたほうがいいわけですから。

 

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▲Montag Booksellersでは、本に関するイベントも手がけています

 

「Montag Booksellers」がこだわる本のセレクト

宮迫さんが店長を務める「Montag Booksellers」は、どんなコンセプトの本を選んで置いてあるのでしょうか。 そのこだわりについて聞きました。

 

私は海外の小説が好きなんですが、ここにはそんな私の好きな本や、このHUBのコンセプトに合わせた本を選んで置いています。 HUBというコワーキングスペースは海外のいろんな国々とネットワーキングされている場所なので、国内よりも海外の本を多く揃えていますし、「資本主義に変わる価値観」や「これからの経済や働き方」や「自給自足」といったコンセプトの本を中心に選んでいます。HUBに魅かれて集まってくる人と、私の興味分野は近いなと感じています。

 

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▲Impact Hub Kyoto のコンセプトに合わせて、これからの経済や働き方など、新しい価値観の本もずらりと並んでいます

 

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▲宮迫さんが好きだという海外の小説も

 

 

出版社が本屋を開くことの意味

 

出版社が本屋さんも運営するのはとてもユニークなことです。そこには宮迫さんのどんな想いが込められているのでしょうか。

 

出版社では本を作って問屋に卸すのが仕事なんですが、それだとどんな人が買って、買った人がどんな風に本を読むのかわからないんですね。だから、本が人の手に渡った後まで寄り添いたくて、本屋さんをやろうと思いました。

だから、HUBのようなコワーキングスペースで、本を読んだ後でアクションを起こしやすい場所、あるいはアクションを起こす人が集まる場所でやることに意味があると思っています。例えば、ツリーハウスの本を読んだ人たちと一緒に本当にツリーハウスを作るとか。そういう読んだ後のアクションが生まれるイベントをもっとやりたいですね。

本の業界にいると「本そのもの」が目的化してしまいがちなのですが、多くの人にとって本はあくまで娯楽や手段に過ぎないのだろうと思います。本を閉じたものにしないで、みんなで楽しむものにできたらいいなって思います。

 

 

本がどうしてこれほど私を魅きつけるのか

 

宮迫さんの人生に大きく関わってきた本というもの。最後に、宮迫さんと本の関係について聞きました。

 

私がどうして本にこだわっているかというと、本に描かれているもの、本が伝えようとしていることで、自分の価値観が大きく転換するような経験をたくさんしてきたからです。本は私にとって、いまだに喜びと驚きに満ちたものです。

 

動画や映画と違って、本は読むスピードや止めるタイミングを自分で決められます。私にとって、そういう本との接し方がすごく自然で居心地の良かったんですね。いまは忙しくてなかなかゆっくり本を読む時間が捻出できませんが、それを取り戻したいなって思っています。

 

だから、いずれこの場所でも、各々が自由に本を読めるような時間も作れたらいいなと思っていますよ。

 

 

 

宮迫 憲彦 (みやさこ のりひこ)

 

・フィルムアート社 営業部

・Montag Booksellers 店長

・DOTPLACE 編集メンバー

 

 

・プロフィール

岡山県倉敷市の瀬戸内海に面した海沿いの町で育つ。一橋大学社会学部卒業後、本好きが高じて大手ナショナルチェーンに入社。関西への配属と度重なる転勤を経て、最終的には広島へ。度重なる転勤と、広島で子どもが生まれたことをきっかけに「どこで暮らすのか」が重要なテーマに。

その折、出版社のフィルムアート社が関西での人員を募集しており、そこに滑り込むことに成功。

出版社で働きながら、関西で暮らすという二兎を追う生活を実行中。どうしても都会での生活に馴染めず、田舎暮らしに憧れている。